釜山編 (2004.3.19)

会社に行けば来る日も来る日もニュースを見続けている。別に閑職だからというわけではない。それがオレの業務だ。好むと好まざるにかかわらず、ニュースを見続けないといけない。モニターとにらめっこの日々であるのだが、おかげでいろいろと有益なニュースを得ることもできる。統一号が3月18日限りでなくなるという情報もこうして得たものだし、高速鉄道(KTX)に関連した情報もいちはやく入手することができる立場である。こうして得たとっておきの情報というのが、高速鉄道の一般向け試乗会だ。インターネットで予約できるのだが、先着順で、しかも無料という太っ腹な企画だ。対象は鉄道会員に入会している人。おぉ!入会しておいてよかった。

さて、鉄道庁の発表によると、3月19日から22日までの4日間を、実際の運行スケジュールにあわせたリハーサルを行うとのこと。このうち一部の列車を一般に開放するというものだ。予約殺到のおそれがあるので、利用は片道だけにかぎり、復路は各自で手配(もちろん有料)しなければいけないが、ひとあし早く、しかも無料で高速鉄道に乗れるという機会は今回しかない。発表があったのは予約開始前日(しかも新聞掲載は予約開始当日)。17日午前11時からインターネットで予約開始だという。これはもう業務そっちのけで予約に全神経を集中しなければいけないだろう。さいわいそういうことには理解のある会社だ。当日は出社早々(そもそも出社時間が午前11時なのだ)に鉄道会員のサイトに接続し予約開始時間を待ち続ける。

11時きっかりに「予約画面へ」のボタンをクリックするが、「予約は午前11時からです」とダイアログが出る。ん?もう11時なんですが? 何度トライしても同じ。こりゃまいったぞ。
やや遅れて接続した隣の席ではすでに予約画面に飛んでいる。さては11時前から接続していたのが裏目に出たか。ブラウザを閉じて再度立ち上げるとようやくつながった。出遅れたのは痛かったが、幸いにも残席には余裕がある。何も考えずに19日の釜山行きを選択して予約完了。平日なのでしばらくは残席もあったが、20日出発分はすぐになくなったようだ。しばらくしたらすべての席が埋まった。時間にして20分もかからなかったと思う。その後のニュースでは十数分で売り切れ(無料だから売り切れとは言わんか)たと報じていた。

ところで、普段はチケットを予約するとすぐに確認のメールが来るようになっている。しかし、今回の予約分については待てど暮せど確認メールが来ない。直後に予約した釜山からのセマウル号のチケットは確認メールがきているので、もしや予約できてないのかと不安になる。不安がってもしかたないので、仕事帰りにソウル駅に寄ってきた。会員窓口で会員証を提示すると、係員が端末を叩きだすが、高速鉄道の予約は入っていない。そんなばかな! 「あの、試乗券の予約をしたのですが……」と申し出ると、専用の窓口があるという。そちらで会員証を出すと無事に発券してもらえた。あとは当日を待つだけである。


それにしても、である。先週釜山に行ってきたばっかりだというのまた釜山に行くとはご苦労なことだ。また釜山タワーにでも上るつもりかいな。試乗列車は釜山行きだけでなく、木浦行きと光州行きもあったのに、予約殺到でチケットの瞬間蒸発を恐れるあまり、予約画面にデフォルトで表示されていたソウル―釜山でそのまま予約したのが敗因だ。これまで木浦も光州も早朝到着でまともに観光してないんだから、こういう機会にこそ行くべきなのだがなぁ。高速鉄道は8時55分発で釜山には11時46分に到着。9時出発のセマウルだと13時26分の到着なので、1時間半の時間短縮になっている。帰りは17時発のセマウルを予約した。さぁ、釜山での5時間をどう過ごす?

さて、出発当日。発車20分前にソウル駅に到着すると早くも行列ができている。発車案内の電光掲示板には「KTX」の文字が表示されている。高速鉄道開業にあわせて設置された自動改札機もこれまではカバーがかかっていたが、きょうはチケットを実際に通して乗車する。

■左:試乗会に訪れた人たち ■右:停車中のKTX


はやる気持ちを抑えつつホームに降りると列車が姿を現した。階段を下りたところがちょうど指定された11号車だが、先頭部まで行って写真を撮る。鋭くとがった先頭部が高速鉄道っぽい感じ。フランスからの技術導入なのでフランスの高速鉄道TGVの面影を色濃く残しているが、個人的にはあまり好きなデザインではない。オリジナリティがないせいかも。
列車の前で記念撮影をしている人はほとんどなく、新聞社のカメラマンはまわりの人に記念撮影するよう勧め(撮影風景を新聞に載せたいそうだ)ていたが、2組くらいしかいなくて弱り顔だった。オレも協力してあげたいが、1人で来てるし風貌がアブナイので新聞向きではないので辞退する。
一通り撮影を終えたところで乗車する。車内はほぼ満席。さすが十数分で完売しただけのことはある。が、オレの乗った車両の隣の車両とその次の車両は1人も乗ってない(その先の車両までは確認してない)。今回の試乗会はすべての座席を開放したわけではないようだ。オレの席は通路側だったが、隣の車両に行けば好きな席に座れるのでよしとする。乗客はほとんどが年輩の人たちで、若い人は少なめ。平日だからしかたないか。また、鉄道マニアのようなのはほとんどおらず、車内をウロウロする人も見かけなかった。

■左:精悍なフォルム ■右:駅名標も新デザインに


定刻は8時55分だが3分遅れて発車。拍手でも起きるかと思ったが意外とみんなおとなしい。ソウル市内はさほどスピードも出さずに走行する。車内に騒音はなく、揺れもほとんどないので乗り心地はいい。ただ、居住性の面ではイマイチの感がある。
まず、座席が固定されているのが気に入らない。座席配置は車両中央に向かって座るいわゆる「集団見合い型」で、向きを変えることができない。すなわち、運が悪ければ釜山に着くまで進行方向に背を向けたままとなる。また、4人グループで乗車の際も、席を向かい合わせにすることができない(車両中央部のみ向かい合わせになっている)。これは後に車掌の案内放送で「時速300キロで走るということから安全性に配慮した措置」と説明があったが、技術導入元のフランスの車両の構造をそのまま持ち込んだだけではないだろうか。新幹線では席の向きを変えられるのだから、改善の余地はあると思う。
座席については、前後の間隔が狭いのも難。そしてリクライニング。背もたれを倒すと座面が前にせり出てくる「簡易リクライニング」というもの。リクライニングの角度も浅く、休みたい時には不向き。セマウル号のシートは向きも変えられるし、シートピッチも広い。リクライニングは深く倒せるし、レッグレストまでついているの非常にゆったりしている。それに引き換えKTXはかなりランクが落ちる。高速化のために居住性を犠牲にしたというのなら残念な判断だ。もっとも、高速鉄道だけに、乗車時間も短いからそれほどゆったりしたシートなど必要ないのかもしれないが。今後ソウルから釜山まで行く機会があれば、時間を選ぶか、快適さを選ぶか、迷うところだ。

■左:車内のようす ■右:車両中央部の席はテーブル付き


光明駅の手前でトンネルに入り、ここからが新線として建設された高速鉄道部分。光明駅には停まらず列車はスピードを上げる。ソウルを出発して30分ほどして「ただいま時速300キロで走行しています」と案内放送があった。やはり車内は拍手をするでもなく淡々としている。ときどき携帯電話で「いま300キロだって」と話している人がいるくらい。実際のところ、300キロと言われてもあまり実感はない。揺れもほとんどないし、トンネルに入るときもほとんど衝撃がない。騒音は若干あるが、それは高速走行ゆえ仕方のない部分だろう。さらに30分走り最初の停車駅の大田に到着。乗降客はわずか。
車内ではさっきからテレビ局の取材スタッフがウロウロしている。乗客へのインタビューや、車内を見回る鉄道公安官、女性乗務員の姿などを撮影している。オレにもインタビューがきたら居住性の悪さでも指摘してやろうかと思ったが、人相が悪くてインタビュー向きではないのか素通りされてしまった。

■左:300キロ走行中 ■右:大田駅にて


大田を発車した列車は再度時速300キロまで加速し、10時40分に東大邱に到着。となりのホームに停まってる列車では乗客が不思議そうにこちらを眺めている。開業前の高速鉄道に乗客がいっぱい乗ってればそりゃ不思議だわな。ちょっとした優越感にひたったりして(4月からは乗りたきゃいくらでも乗れるんだけどな)。

東大邱から釜山までは在来線を走行するので、最高速度は時速150キロと従来のセマウル号並の速度に落ち込んでしまう。列車の揺れは激しくはないが、カーブ区間では遠心力がはたらくので体が引っ張られる。高速鉄道とはカーブの規格が違うから当たり前だが、ここまで快調にかっとばしてきただけに、急激なスピードダウンとカーブの連続にはややがっかり感もある。釜山からソウルへの上り列車なら楽しめるかもしれない。
釜山の市街地に入ると列車はさらに速度を落とし、11時46分定刻に釜山に到着した。ホームに降り、写真撮影をしていたら、女性乗務員が出てきたのでついでに撮らせてもらう。ちょっとオレ好みの美人だったので……(女性公安官も好みの美人がいた。KTXに乗る楽しみができたわい)。

■左:テレビ局もきてた ■右:オレ好みの女性乗務員


ソウル駅で使っていた自動改札機は釜山駅にも設置されている。チケットはそのまま回収されるのかと思ったが、自動改札機は入場用にしか稼働しておらず、今回の試乗チケットは手元に残すことができた。釜山駅は新駅舎の供用が開始され、かつての名物だった大階段も屋根とエスカレーターがついた新しいものに生まれ変わった。ただ、駅構内はまだ工事中のところも多い。2週間後の高速鉄道開業に間に合うのか?

■左:釜山駅の駅名標は変更前 ■右:釜山駅


さて、楽しいひとときが終わり、オレに突きつけられた課題は、このあとの5時間をどう過ごすかである。大階段を降りたところにある観光案内所に行こうと思ったら撤去されてしまって跡形もない。あてもないまま海雲台に向かうことにする。ちなみにオレは釜山ではいまだ釜山タワーと海雲台くらいしか行ったことがない。釜山にくるとついつい行ってしまうのだが、特にお気に入りの場所というわけでもない。ほかのスポットも発掘したいところなのだが、観光案内所がないんじゃどうしようもないよ。
列車で海雲台に行きたいのだが、残念ながら列車の本数は激減してしまい時間があわないのでバスで行くことにする。列車、バス、地下鉄のどれをつかっても所要時間に大きな差はない。30〜40分ほどで海雲台に着く。
昼時だし、せっかくだからうまいものでも食べようかとも思ったのだが、今回の旅行はまったく予定外の、帰りもセマウル号利用なので懐具合があまりよくない。結局マクドナルドに行ってしまった。ちなみに海雲台の名物は「海雲台カルビ」である。春川で1人でタッカルビを食ったオレだが、さすがに1人で焼き肉を食べる勇気はない。そもそも海雲台カルビは実際のところ「目黒のサンマ」と同じで、海雲台が牛肉の産地というわけでもないらしい。だいたい海が目の前にあってなんでカルビなんだか。海を前にビッグマックを食ってるオレが言うべきことじゃないかもしれないが。

■左:ビーチ ■右:きっと伝えてよカモメさん♪


せっかく海に来たのでビーチまででてみる。天気はいいのだがやや肌寒いせいもあり、人はあまりいない。カモメがいっぱいいた。近くにアクアリウムがあって、もう5年くらい前から気になってたのだが入場料が高くてなかなか行けなかったのだが(日本でも韓国でも水族館は料金高いね)、今回は思い切って行ってみることにした。よくよく入場料を見たら14,500ウォンだった。大騒ぎするほど高くはないな。

■左:さかなさかなさかな〜♪ ■右:オウムガイ


男1人で水族館というシチュエーションはさみしいものではあるが、平日なのでほかの客はほとんどいないし、じっくりと見学するにはちょうどいいかも。淡水魚のコーナーから熱帯魚やら甲殻類やら見ていくと、途中に水棲生物と触れ合えるコーナーがあって、水槽にヒトデとかが陳列されていた。30男がヒトデとたわむれるというのはむなしさ倍増なので避けておく。さらに進むとサメとかウミガメとか回遊魚のいる大きな水槽が現れる。ちょうどエサの時間らしくダイバーが潜っていて、なぜかオレに向かって手を振ってくるのでオレも振り返しておいた。なんとなくさみしい30男……。水中トンネルを抜けるとミュージアムショップがあって、そこを抜けるともう終わり。なんかあっけなく見終わってしまってもったいない感じだ。もっとじっくりみればよかった。

■左:手ぇ振られてもなぁ……。 ■右:サメ(なんかかっこわるい)


その後は近くのスタバでコーヒー飲みながら休憩したあと、地下鉄で釜山駅へ。チケットを購入してソウルに向かうセマウル号に乗り込む。往路に乗ったKTXの居住性における欠点が、セマウルに乗ると際立って感じられる。やはり普通席でもゆったり座れるセマウル号のほうがいいや。
17時出発でソウル到着は21時28分着。KTXに比べると2時間近い差がある。KTX開業後はセマウル号は大幅なスピードダウンを強いられ、ソウル―釜山が5時間以上とKTXの2倍近くになる。すなわち、往復で考えると5時間の差がつくことになる。そういう比較をしてしまうと、単純に居住性の面だけでセマウル号を選択するのもどうかと思うなぁ。なんかこれからの旅行のスタイルをどうすべきか、苦しい選択を迫られることになりそうだ。

■どっちを選ぶ?


主な出費
ソウル→釜山(KTX)
 0ウォン
食費、移動費など 
10,000ウォン
アクアリウム入場料
 14,500ウォン
釜山→ソウル(セマウル号)
35,000ウォン
合計
59,500ウォン

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