1945年の京城にタイムスリップ
■本町入り口(現在の明洞)
タイムマシンを手に入れたので、前から行ってみたかった日本統治時代のソウルに行くことにした。と書いた時点でネタがバレバレなんだけど、構わん。黙って読め。机の引き出しからタイムマシンに乗り(ドラえもん?)、着いたところは京城の中心部の鍾路。日本統治時代から半島一の繁華街で、いわば朝鮮の中心地とも言えるところだ。朝鮮初の百貨店の和信百貨店の前に出てきた。
■左:京城のランドマーク、和信百貨店 ■右:その入口でポーズ
和信百貨店は87年に閉店し、いまではミレニアムタワーという近代的なビルが建っている。年輩の人たちには「ミレニアムタワー」よりも、「旧和信」のほうが通じやすいし、バスの経由地にも「旧和信」の表記が残っている。オレが初めてソウルに来た89年には跡形もなかったのだけど、こうして実際に見ることができるとは実に幸せだ。タイムマシン万歳!
■左:日本人形とか重箱が売ってるらしい ■右:呉服売り場にはセンスのない服が(特に左端の)
和信百貨店から歩いて行くと鍾路警察署があった。入口には憲兵が立っている。不逞鮮人から皇国臣民を守るという重要な任務を遂行中であることはわかっているが、記念なので一緒に撮影させてもらう。デジカメで撮った写真をその場で見せたら驚いていた。60年前にはコンパクトカメラすらなかったからなぁ。
■左:日章旗はためく鍾路警察署 ■右:憲兵と記念撮影
鍾路の街を散策してみることにする。繁華街だけあって、お店も多いし、人通りも多い。メインストリートには市内電車も走っている。停留所の写真を撮っていたらちょうど電車が来たので乗ることにした。
■左:停留所にて。 ■右:市内電車
東に向かって少し行ったところで降りてみた。そこにあったのは京城無線電信局。なにをするところなんだろ?電話局のことかな?
どこを歩いているのかわからなくなってしまったのだが、適当に歩いて行くことにする。表通りにはコンクリ造りの建物が多く、近代的な店舗が多い。
■左:電信局。後は東大門 ■右:近代的な建物が並ぶのはさすが半島の中心地
ところが、裏通りに入ってみると、昔ながらの韓国式家屋も多く残っているようだ。表通りとはちょっと違う印象。そういえば街を歩く人のスタイルも表通りと裏通りでは違うような気がする。表通りは洋服を着たモボとかモガが闊歩してるのだが、裏に入ると韓服を着た人たちが多い。薄汚い子どももうろちょろしている。
■左:韓国式家屋の「鍾路旅館」 ■右:こちらは日本式家屋。仁丹の看板がいい味
さらに奥に進んでいくと清渓川に出た。現在は道路に覆われ「清渓川路」という名前がかろうじて往時を思い出させるが、昔はいくつもの橋がかかる立派な川だったのだ。で、川岸にはいわゆる乞食村があったりして、治安はよさそうじゃない。深入りせずに出ることにする。
■清渓川の乞食村には掘っ立て小屋が並ぶ。
腹が減ったのでメシでも食うかとあたりをうろつく。飲食店は結構多い。とりあえず普通の食堂に入ってみることにする。味はどうということのない普通の日本食でした。食後にコーヒーでも飲もうと思っていたらちょうどカフェを見つけたのでそちらで一服する。当時のコーヒーは今みたいな甘ったるいにおいのしない普通のコーヒーでした。
■左:上野やぶ食堂 ■:カフェ「ヴィーナス」
さて、疲れたのできょうの宿を探すとしよう。さっきは韓国式家屋の鍾路旅館というのがあったが、朝鮮人が経営する旅館よりは日本人が経営している宿のほうが安心だ。鍾路のはずれに鈴木旅館という宿があったのでそちらに行く。とりあえず荷を降ろしてほっとする。
■左:食堂に挟まれた鈴木旅館 ■:入口で記念撮影してみた
身軽になったところでまた街歩きにでる。旅館の近くには優美舘という劇場がある。娯楽の少ない時代なのか、なかなかの盛況なようだ。残念ながらチケットは売り切れで見ることは出来なかった。
■左:優美舘へ続く道は人出も多い ■右:優美舘では「自由万歳」を上映中
映画を見られないんじゃしょうがない。本町に向かってみる。日本人の多い街で、着物姿の人も見かける。中には日本刀を脇に差しているのもいる。そりゃまずいんじゃないだろうか?
■左:刀を持つ男 ■右:意外とおちゃらけたおっさんだった
通りを歩いていたら鍾路の方が騒がしい。何事かと駆けつけてみると、デモ隊が「大韓独立万歳!」と叫びながら行進している。普信閣の前に集まったデモ隊から代表者が前に出てくると、高らかに独立宣言を読み上げた。これはなにかとんでもない事態に巻き込まれたか?危険を感じたオレは鍾路警察署に向かった。
■左:普信閣前で独立宣言 ■右:沸き起こる「大韓独立万歳」の声
警察署に着くとそこは修羅場だった。さっきまではためいていた日章旗は無残にも引きずり下ろされ、代わりに太極旗がはためく。蜂起した民衆は警察署内になだれこんだようだ。警察署の入口でも独立万歳を叫んでいる。
■左:警察署になだれ込んだ民衆 ■右:太極旗を振り回す人
さっきまで門番に立っていた憲兵はどこに?探してみると民衆に捕まっていた。ひざまずいた後からは銃を突きつけられている。「殺せ殺せ!」と叫ぶ殺気立った民衆。オレもこのままここにいたら何をされるかわからない。その場からそっと抜け出ると急いでタイムマシンに乗って帰ってきたのだった。(完)
■左:一緒に写真を撮った憲兵が! ■右:すまん、オレに助けることはできなかった。
では種明かし。これはMBCで放送中の「野人時代」のオープンセット。植民地時代の京城で一大勢力を誇ったヤクザ、金斗漢の生き様を描いたドラマで、放送開始直後から大人気となり、京畿道富川市に作られたオープンセットには見学者が押し寄せたという。当初は無料で開放していたが、見学者向けに整備したうえで有料で再オープンした。実際のドラマはまだ撮影中で、最初にここに来たときには警察署には「内鮮一体」というスローガンが掲げられたりして、植民地時代を再現した。今回訪れたときはドラマの舞台も独立後に変わったため、植民地時代を思わせるものは撤去され、違う建物に変えられていた。
ちなみに、撮影用のセットなので、建物内に入ることはできない。そもそも表側しか作っていないのである。上の文章中に食堂で食事をしたような記述があるが、もちろんそれも不可能である。これらの建物は実物よりも一回り小さく作ってあるので、意外と小さい印象を受けた。ドラマで見るかぎりでは小ささはあまり感じなかったのだが。
ドラマの中では市内電車もしっかりと走行していたが、今回訪れたときは動きもしないし見学者が乗ることもできなかった。全体的なリアルさの点ではイマイチの感じ。憲兵や刀を差したエセ日本人がたまにいるのは笑えたが、とことんまで当時を再現したというものでもない。看板の文字も手書きで誤字も多く、その辺りをしっかりと作り込めばもっとリアルなものになったと思う。現状ではいかにもセットというちゃちな作りでしかない。ちなみに金斗漢をモデルにした映画「将軍の息子」シリーズでも当時の京城を再現したセットが使われているが、「野人時代」のセットよりもリアルさでは上だったようだ。
大韓独立万歳のイベントは、訪問した日がたまたま3月1日(独立運動を記念した祝日)だったためのもので、定期的に行うものではなさそうだ。このイベントで旗を振っていたおじさんは、本町で出会った日本刀を持ったエセ日本人でもある。
このオープンセットはこのままテーマパークとして残される予定で、「野人時代」のほかにも植民地時代を舞台にしたドラマなどの撮影にも使われる予定だという。ちょっと毛色の変わった観光コースとして訪れてみるのも悪くないだろう。
このほかの写真はこちらにまとめてみたので関心のある方はどうぞ。